箱庭コント93「大遅刻の免罪符」

ここあん鉄道3丁目駅の改札口で男が泣き叫んでいた。

「火曜だ! 俺が池袋を出たのは火曜の朝なんだ! なんで金曜になってるんだよ!」

握りしめたスマホの画面には、取引先からの不在着信が五十数件。男のネクタイは歪み、目は血走っている。

ここあん鉄道の駅員・鉄美鈴くろがねみすずは、白手袋のシワを丁寧に伸ばしながら、冷ややかな視線を落とした。

「お客様、当駅をご利用いただきありがとうございます」

「ありがとうじゃない! 契約が! 俺の人生が!」

「左様でございますか」

美鈴はまったく乱れのない動作で懐から紙の束を取り出し、流れるようなペン捌きで何かを書き込んだ。そして、それを男の胸ポケットにスッと差し込む。

「こちら、遅延証明書になります」

「は?」

「『時空のねじれにより72時間遅延』と明記しております。これから向かわれる先でお出しになれば、おわかりいただけるものと」

「こんなの通じるか!」

「秩序は守られました。急行電車が通過いたします。白線の内側へお下がりください」

美鈴は短く笛を吹き、放心する男を改札の外に追い出した。

(了)

鉄 美鈴|箱庭ここあん村の住人紹介
氏名:鉄美鈴(くろがね みすず)年齢・性別: 26歳・女性肩書: ここあん鉄道職員 3丁目駅・大学前駅勤務ここあん村の通勤・通学の足を預かる若き女性駅員。小柄な体をピンと伸ばし、「安全ヨシ!」と響く声でホームを仕切ります。秒単位の運行を愛し…
ここあん鉄道「3丁目駅」|箱庭ここあん村の中心スポット
日常と異界が交差する「ここあん村」の玄関口椎名町三丁目に位置する「3丁目駅」は、外界(豊島区池袋・椎名町界隈)とここあん村を繋ぐ唯一の窓口です。都会の喧騒と村の混沌が混ざり合う緩衝地帯にあり、復興の最前線である「ボストー区」にも隣接していま…
[コント台本・掌編 約600本]

主な舞台は、椎名町三丁目から広がる箱庭「ここあん村」。箱庭コント作家・千早亭小倉の手による、どこか懐かしい日常劇やクスッと笑えるコメディ、沁みる掌編を絶賛公開中です。これからも「読むシットコム」の世界を追究していきます。
*ここあん村および本サイトに掲載している小説類の設定はフィクションです。 *The articles on this site were written by a human, peppered with AI. *無断転載禁止 Copyright © 2025 千早亭小倉|箱庭コントを紡ぐ 話紡庵レーベル All Rights Reserved.

[コント台本・掌編 約600本]

主な舞台は、椎名町三丁目から広がる箱庭「ここあん村」。箱庭コント作家・千早亭小倉の手による、どこか懐かしい日常劇やクスッと笑えるコメディ、沁みる掌編を絶賛公開中です。これからも「読むシットコム」の世界を追究していきます。
*ここあん村および本サイトに掲載している小説類の設定はフィクションです。 *The articles on this site were written by a human, peppered with AI. *無断転載禁止 Copyright © 2025 千早亭小倉|箱庭コントを紡ぐ 話紡庵レーベル All Rights Reserved.

箱庭コント
higashiboctokをフォローする
タイトルとURLをコピーしました