箱庭コント301「分速400メートルの弟」|はるなつコントシリーズ
(あらすじ)夕暮れの居間で、十歳のはるひこが算数ドリルを前に、旅人算で弟が猛スピードで兄を追いかける状況に人間ドラマの事件性を感じ、うっとりしている。ソファで寝そべる母みちこが計算を急かすも、はるひこは弟の執拗な追跡から逃れる権利はないのかと、帰宅した弁護士の父まさよしに真顔で法的妥当性を問い詰める。
箱庭コント302「モノレールの行方」|はるなつコントシリーズ
(あらすじ)自宅の居間で、十歳のはるひこが画用紙に電車の路線図を書き写しながら、遊園地へモノレールに乗って遊びに行く権利があるかと尋ねる。海外小説を手にした弁護士の父まさよしは、モノレールなどは子ども騙しの鉄の箱だと切り捨てつつ、駅名の小さな文字の誤りを誤訳同然だと偉そうに指摘して話の腰を折る。
箱庭コント303「2つの空」|はるなつコントシリーズ
(あらすじ)掌編小説風な一編。砧にある映画撮影所の裏道を歩く十歳のはるひこが、高い塀の上にそびえる青空が描かれた巨大な背景画を見上げ、本物の空があるのになぜ偽物の空を置くのか母みちこに尋ねる。買い物袋を提げた母みちこは、映画製作の都合だと淡々と答えつつも、夕飯に傷みかけた鶏肉をどう調理するかで頭を悩ませて上の空で受け流す。
箱庭コント304「軽車両の落とし物」|はるなつコントシリーズ
(あらすじ)居間の窓から外を眺めていた十歳のはるひこが、道路を行く馬術部の馬を見つけ、馬が道路を歩く際の交通ルールについて父に尋ねている。新聞を読んでいた弁護士の父まさよしが、法律上は軽車両だから左側通行が原則だと解説し、路上に落とされた馬糞の処理を巡って法律論と生活の不満が入り混じった議論を始める。
箱庭コント305「薄い黄色い水」 |はるなつコントシリーズ
(あらすじ)居間で国語辞典を開いていた十歳のはるひこが、米屋の配達飲料プラッシーを飲みながら、果物らしくないため「薄い黄色い水」と勝手に新語を書き足したと報告。海外小説の誤訳に怒って書斎から出てきた弁護士の父まさよしが、辞書を何だと思っているのかと呆れ、翻訳のセンスや言葉の置き換えを語り聞かせてくる。
箱庭コント306「等間隔にずれていく」|はるなつコントシリーズ
(あらさうじ)休日の居間で、弟なつひこが床にレンゲを規則正しく並べる姿を見た十歳のはるひこが、「等間隔」という言葉の正確な意味を辞書で探そうとしている。新聞を読んでいた弁護士の父まさよしが、木を植える間隔に例えて偉そうに教え始めるも、はるひこが陶器や植物の定義を勝手に結びつけて珍妙な屁理屈を返し始める。
箱庭コント307「ボールペン」
(あらすじ)ここあん村のパティシエの丹波りんが、インクの切れたボールペンの替え芯を透かし見ながら、わずかに残るインクで仕入れメモを書かせるのは傲慢だと語る。パン職人の生地こね子が手元を鋭く凝視し、それはペンに対する暴虐非道な行為でありペンの沈黙の意思を尊重すべきだと同調して議論を深めようとする。
箱庭コント308「湾曲の正当性」
(あらすじ)中野あやねが、台所のまな板の上で極端に曲がったキュウリの端をなぞりながら、この湾曲には植物なりの正当な理由があるのではないかと問いかけている。孫でここあん大生の楓子が、重力へのささやかな抵抗や土壌に対する妥協案ではないかと、曲がった形状の肯定的な意義を真面目に分析して同調してみせる。
箱庭コント309「『安心』の定義」
(あらすじ)ここあん村図書館の司書菜箸千夏が、分厚い国語辞典を開きながら「安心」の語釈が冷たすぎると不満を漏らしている。手元の洋書を読んでいた姉で翻訳家の菜箸かなが視線を上げずに言葉を返し、辞書は感情に寄り添うカウンセラーではなく単なる事実の定義に過ぎないと、妹の情緒的な要求をあっさり受け流す。
箱庭コント310「文房具トリオ」
(あらすじ)風呂なしアパートの一室で、脚本家志望のぺらいちまいが、世界をト書きで記述するために生きていると気取った自己紹介を繰り出している。映像作家のしあんまぜんたがスマホのレンズ越しに相手を値踏みし、さらに音響屋のがらすきらいぶが独特の愛称の由来を語り出し、濃すぎる自己設定を互いにぶつけ合う。
箱庭コント311「垂直の訪問者」
(あらすじ)筋金入りの引きこもり老人のまんのすけが、自室で天井のシミを数える業務に励んでいる。ペンタ塔の管理人さやかっくすが、二階の窓枠に逆さ吊りで張り付いて現れ、外壁のグリップの良さや老人の眉間のシワをボルダリングの壁のように評価しながら、平穏な引きこもり生活を豪快にかき乱しにかかる。
箱庭コント312「地質学的欲求と経済的飢餓」
(あらすじ)ここあん大学早稲田サテライトの地下ラウンジで、古生物学専攻のここあん大学院生花野環奈が、床に落ちたピーナッツを緊急離脱した化石に見立ててじっと観察している。スマホでチャートを睨んでいた進化心理学専攻の大学院生金田エリが、シフト消滅による金欠の危機を訴え、自身の空腹や食欲を強欲な生存戦略に結びつけて語りかけてくる。
箱庭コント313「1997年のミッシング・リンク」
(あらすじ)ここあん大学早稲田サテライトの中庭で、古生物学専攻の大学院生花野環奈が苔むした地面に這いつくばり、泥の中に埋もれた遺物を歴史的な発掘だと慎重に掘り出している。日傘を差して見下ろす理論物理学専攻の平泉慧が、日光によるエネルギー損失を嫌がりながら、発掘された30年前の液晶ゲーム機を冷淡に分析して突っ込みを入れる。
箱庭コント314「最適化されないリソース」
(あらすじ)夕暮れ時。ここあん大学早稲田サテライトの地下ラウンジ。分子系統学専攻の大学院生篠田律が、タブレットに表示された複雑な系統樹を凝視しながら研究に没頭している。ふと視界に入った安価なビニール傘の配置に強い違和感を覚え、この物体がこの座標に存在する理由や意図を巡って、端末のAIを巻き込み過剰な仮説検証を繰り広げ始める。
箱庭コント315「透明なアンコンフォーミティ」
(あらすじ)真夏。ここあん大学早稲田サテライトの地下ラウンジ。古生物学専攻の花野環奈が、太古から続くセミの鳴き声の生存戦略に思いを馳せている。突然窓ガラスにセミが激突した音を聞きつけた環奈は、遺伝子の記憶にない「透明な壁」にぶつかった不条理を、時空のバグや認識の不整合としてAIと共に詩的に考察し始める。
箱庭コント316「こぼれた紅茶」
(あらすじ)ここあん大学早稲田サテライトの地下ラウンジ。古生物学専攻の大学院生花野環奈がティーカップを手に、太古の植物の記憶が溶け出していると静かに感慨に耽っている。向かいに座る理論物理学専攻の平泉慧が単なる物質の拡散だと冷淡に切り捨てた直後、誤ってこぼしてしまったテーブルの紅茶の染みを巡って、二人の学術的持論が火花を散らす。
箱庭コント317「ステキさんとダダダさん」
(あらすじ)公民館のロビーで、主婦の矢尾玲子が大きな姿見の前に立ち、自身の眩しい美しさを引き立てる額縁として背後のダダダさんを従えている。通りかかった文芸評論家の徒然士が、甲斐甲斐しくダダダさんの服の乱れを直す玲子の親密な仕草を目撃し、二人の間に漂う異様な夫婦感に耐えかねて声を荒らげて割って入る。
箱庭コント318「ちがう男に魅せられて?」
(あらすじ)ここあん大学の地下ラウンジ。文芸評論家の徒然士が長机で原稿に目を通している。そこへフリーライターのおはぎはんが歌いながら飛び込んできて、昭和の名曲『魅せられて』の歌詞を深読みし、主人公が他人の腕に異様な執着を見せているという物理的矛盾を訴える。たまたま居合わせた大学生の恋流波陽を巻き込んで実証実験を迫る。
箱庭コント319「オノマトペの罠」
(あらすじ)ここあん高校。放課後の薄暗い空き教室で、元文芸部員のギオンがパイプ椅子を鳴らしながら、ライバルたちのトリオに対抗して新グループを結成しようと目論む。擬態語担当の弟ギタイに同調されつつ、長大な描写を愛する元部員のケイヨウに対し、擬声語担当の「ギセイ」を名乗ってトリオに加わるよう強引に要求してくる。
箱庭コント320「じひしんちょうの11日」
(あらすじ)ここあん図書館の交流ラウンジで、主任司書の菜箸千夏が返却図書の確認作業をしながら日付の数え歌を口ずさんでいる。喫茶店「小古庵」のアルバイト東山キイロが立ち止まり、10日を過ぎた11日以降に固有の愛称がないのはおかしいと食ってかかり、近くで辞書を広げていた高校生のジカクも独特な珍説を携えて議論に割り込んでくる。



